2月15日16日の夜に、長門湯本温泉街で「音信川うたあかり」が開催されました。金子みすゞさんの詩や童謡に取り上げられる、優しくて清らかな世界をあかりとして視覚化し、うたの世界に想いをはせた、冬の音信川を彩る素敵なイベントです。
心配された小雨も無事にあがり、長門湯本は、澄んだ空気がとても気持ちの良い夕暮れとなりました。いつもより少しだけあたたかく着込んだ人々が、一人、また一人と集まり賑わいを見せています。
前日には、照明デザイナーの長町さんの指示のもと、湯本、門前、三ノ瀬の自治会の方々や長門湯守の大谷さん、伊藤さん達が、あかりのモチーフを設置したり、地元グルメの屋台を立てたりと、精を出しておられました。寒い中だったにも関わらず、時折笑い声が起きる、楽しい作業現場でした。
イベントに先立って開催された「みすゞのあかりモティーフ製作応援ワークショップ」で地域の皆さんにご参加いただき完成したモチーフを、今度は皆の力で飾っていきます。
こうして完成された「音信川うたあかり」は、夜が更けていくにつれ、水面にもあかりがくっきりと映り込み、空が暗くなった分だけ、あかりの花が咲き、川辺を明るく照らしてくれます。
「お花のなかにつつまれりや、私がお花の姫さまで、ふしぎな灰でもふりまいて、咲かせたような、氣がしませう。」さくらの木に登ってみたいという、みすゞさんのかわいらしい詩。(金子みすゞ「さくらの木」 金子みすゞ童謡全集(JULA出版局)より)
刻々と変化していくあかりをみつめながら、きらきら橋や雁木広場に腰かけて、地元のおいしいお料理やお酒をいただくことができたのも、このイベントの贅沢なところです。
「山路に散ったカルタは誰がとる。むべ山ならぬこの山かぜが、さっさと一度にさらってく。」 (金子みすゞ「落ち葉のカルタ」 金子みすゞ童謡全集(JULA出版局)より)
地元の皆さんが腕をふるって地元の皆さんが腕によりをかけて作ったフードやドリンクの屋台が並ぶきらきら橋の上は、和気あいあいのムード。今度は川のあかりの方から橋を見てみれば、あかりがひとつふたつと橋に集まってきて、あたたかな湯気を羨んでいるようです。
寒々しいと感じた空も冷たい水も、あかりのモチーフを際立たせる漆黒のキャンパスになって、浮かび上がった金子みすゞの詩の世界は、訪れた人の心を温めてくれました。
冬の音信川の静かなあかりのイベントは、また次の冬も、ここでしか感じることのできないあたたかさを用意して、みなさまのお越しをお待ちしています。